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PIERROT曲考察 「丘」曲編

「丘」をキーワードに PIERROT 曲を考察。

PIERROT の「丘」曲

PIERROT の曲には「丘」が出てくる曲が結構多い。
タイトルに使われたり、歌詞に使われたり、なんか色々。

そんな「丘」をキーワードにPIERROT 曲を掘り下げてみると、
とある曲同士に関連が見受けられたりして結構面白い。
「この曲の丘とこの曲の丘、同じ丘?」となってみたり、
逆に「同じ丘なのにこの曲とこの曲では解釈違う」とかなってみたり。

そんな、キリトが散りばめた「丘」の伏線をちょっと回収してみる。

この考察は、素敵なピエラー仲間の方々と共に実施しました。
キ●ガイの集いに感謝。
Special Thanks to K, Satsuki, and Yukichi.

メギドの丘

パンドラの匣
8曲目
「丘」と言われたらこれを思い浮かべるピエラーは多いのでは。
2回目の再結成、DIR EN GREY との共同開催 2days ライブ「ANDROGYNOS」(通称「丘戦争」)は、
PIERROT がトリを務めた日程のサブタイトルが「a view of the Megiddo」だったしね。
ま、そんな PIERROT は「メギドの丘」を演奏しなかったんだけどね。笑

「メギドの丘」って何?

「メギドの丘」はイスラエルにある丘の名前。
終末戦争「ハルマゲドン」が起きた場所で、聖書にも登場する。

そうなると、「ハルマゲドンとは何ぞや?」というところをちゃんと理解しておきたくなるが、
このあたりはちょっとだけややこしい。
この「メギド」という地は神話、実話、両方通じて昔から争いや戦いが数々繰り広げられてきた地らしく、
どういう戦いがいかにして起きたかの解釈には様々あるっぽい。
なので、勉強不足の私みたいな人が、あーですこーですと無責任には言えないので、
神とその反対勢力との戦い、世界の終末の象徴、このあたりを何となくイメージしておけばいいかなぁー
ぐらいにしておく。

ストーリー 〜「君」と「僕」

この歌詞のストーリーを一言で言うと、「メギドの丘」で「君」を待つ「僕」のストーリー。
「神に造られた二人」
「下僕として生まれた『君』と『僕』が一度だけ『彼』に逆らう聖なる夜」
このあたりの歌詞から考えると、
「君」と「僕」は、神に造られた最初の人間「アダムとイヴ」と想像。
「口付けを交わした」とあるので、少なくとも男女であることは間違いなさそう。
そうなると、「『彼』に逆らう」の「彼」はおそらく「神」。

聖書との関連性

サビの歌詞は「メギドの丘で待つ君を見上げてる(中略)倒れる僕に気付かずに方舟は消えていく」。
ここから察するに、「君」も「僕」も、神には逆らうけれど争うわけではない模様。
なので、この時点でハルマゲドンやその他の戦いは関係なさそう。
しかも「方舟」。
これがかの有名な「ノアの方舟」だとすれば、もういよいよ関係ない。
ノアの方舟は、地上に堕落した人間が増えたことを憂う神が、
信仰深く正しい人間「ノア」の家族と動物たち以外を洪水で滅ぼしてしまう物語だからね。

そうなるとやっぱり、PIERROT の「メギドの丘」は
聖書や宗教的ストーリーをそのまま再現したものではなく、
それらをモチーフにしつつもストーリーはオリジナル、ってことになりそう。
「鐘の音が伝える終幕の知らせ」
という歌詞あたりからして、終末思想だけは、その地に込められた思いとして受け継いでいるのかも。

HILL -幻覚の雪-

ID ATTACK
8曲目
もう1曲、タイトルに「丘」が登場するのがこの曲。
というか、タイトルまんま「丘」。
「メギドの丘」の次にこの曲を知ると、「HILL」も「メギドの丘」なのかな?と思いたくなる。

ストーリー 〜 カインとアベル

この「HILL」のテーマは、
兄弟でありながら、人類で初めて殺人を犯した加害者と被害者である「カイン」と「アベル」。
聖書の登場人物ですね。
歌詞には一切登場しないものの、PV には思いっきり主役として登場している。
聖書のストーリーでは、
あるとき神が、弟・アベルが捧げた貢物を受け取り、兄・カインの貢物は受け取らなかったことに腹を立て、
その恨みでカインはアベルを殺してしまう、といった話。

でも、歌詞の方は
「約束の丘で君を待っているんだ」
「だからまだ眠らないで あの丘に風が吹いてる」
「だからまだ眠らないで あの丘で君を待ってる」
ちょっとちょっと、どういうこと。
主人公と「君」がカインとアベルなら、殺人のイメージとはちょっと遠い歌詞じゃないか。
更に歌詞は
「祈りの歌はまだ止まない 君にまだ届いていない」
「幻覚の雪が願いを凍らせ奪わないように」
と、何かを祈ったり願ったりしている描写。
ますます殺人とは遠い。

カイン視点のオリジナルストーリー

このあたりの差異はどうも、キリトのオリジナルな解釈によるものらしい。

ここから先は、ソースを確認しきれていないので、
「そんな話があったらしい」くらいの感じでよろしくどうぞ。

その解釈というのが、
神がアベルの貢物のみを受け取ったということは、神はアベルに特別な思いがあるのでは、
例えば、神がアベルを跡継ぎにしようとしてるんじゃないか、
その重荷を、カインはアベルに背負わせたくないと思ったのではないか、
というもの。
その思いが行きすぎて、カインはアベルを殺すに至った、という仮説が、
この曲の背景にはあるとかないとか。
だとすれば、カインの殺人は単なる恨みによる殺人ではなくて、
「覚悟」のような思いがあったのでは、
自分が人類最初の悪事をはたらく意識があったのでは、
っていう。
兄と弟の間には、恨みではなくてある種の信頼関係みたいなものがあったのではないか、
っていう。

キリトによれば、「HILL」の物語は「カインがアベルを待っている」という、
カイン視点のストーリーらしい。
自分が手にかけたアベルを待つカイン。
なかなかオリジナリティある解釈。

ACID RAIN

ID ATTACK
7曲目
歌詞に「丘」が登場する曲。
この曲はアルバム「ID ATTACK」で「HILL」の前に収録されている曲なのだが、
実はこの「ACID RAIN」と「HILL」は
歌詞を読み解くと結構な繋がりがある。

アベル視点のストーリー 〜 「HILL」との繋がり

この「ACID RAIN」のサビ前の歌詞は「もう眠りたいけれど」なのだが、
一方、「HILL」には「まだ眠らないで」という歌詞がサビで何度も登場する。
また、
「ACID RAIN」には「この胸は確かに痛むのに 悲しい顔が分からない」「怒りさえも失って」の歌詞、
「HILL」には「無くしかけた感情に きっと記憶が残ってる」の歌詞。

キリトによれば「ACID RAIN」は、アベルがカインを待つ物語。
「HILL」の逆。
対になってるわけですね。

それを裏付けるかのように、「ACID RAIN」の最後の歌詞は
「笑顔でまた逢えるさ あの丘でなら きっとこの雨が雪に変わってく季節に」
となっている。
「あの丘」は「HILL」、「雪」はサブタイトル「幻覚の雪」に、
バッチリ繋がってるわけですね。
うーん、PIERROT っぽい。

輪廻転生

この曲が「アベルがカインを待つ物語」だという説に基づくと、
アベルは自身を殺したカインに対して「笑顔でまた逢えるさ」と語りかけていることになる。
自分を死に追いやったカインを恨んではいないということなのかしら。
だとしたら、
「HILL」に書いた、カインはただアベルが憎くて殺したのではないという解釈はやはりその通りで、
もしかしたらアベルもそれを理解していたってことなのか。
そう考えるアベルは、死後の世界、または輪廻転生した次の世で、
今度はカインと幸せに再会したいということなのかも。

AUTOMATION AIR

HEAVEN 〜THE CUSTOMIZED LANDSCAPE〜
8曲目
丘のイメージはさほど強くないのだが、曲の冒頭に
「風の吹かない丘の上で 君を想っていたよ」
という歌詞がある。
やっぱり「丘」は、誰かを待ったり想ったりする場所なのね。

「HILL」「ACID RAIN」との繋がり

先ほど書いたとおり、この曲の冒頭の歌詞は
「風の吹かない丘の上で 君を想っていたよ」。
この歌詞に関してちょっと注目したいのが、
別の曲「HILL」の歌詞の「あの丘に風が吹いてる」の部分。
「AUTOMATION AIR」で丘に吹いていなかった風が
「HILL」では吹いているんですね。
更に、
「AUTOMATION AIR」には「星屑が雨のように降り注いで」の歌詞も。
「ACID RAIN」の考察に書いたとおり、
「ACID RAIN」と「HILL」には雨と雪の繋がりがあるので、
この雨の描写はちょっと気になる。

そしてもう1つ、「AUTOMATION AIR」には
「白昼にそよぐ風を待つ僕を見つけ出して」
という歌詞があるが、
「ACID RAIN」には
「声が聞こえるから君を探してる」の歌詞がある。
ますます対になってる感。

そうなると、

「AUTOMATION AIR」
風の吹かない丘
降り注ぐ雨(星屑)
(風を待つ)僕を見つけ出して

「ACID RAIN」
君を探してる

雨が雪に変わる

「HILL -幻覚の雪-」

風が吹く丘

って感じで、この3曲は時系列に並んでたりして。

ストーリー 〜「君」と「僕」

だとしたら 「HILL」で2人は会えたのか気になるが、
「HILL」には「まだ眠らないで」の歌詞。
会えてない、もしくは会えたとしても「君」は眠りについてしまう、
ってとこか。
この場合の「眠り」は、死んで生まれ変わるまでを指しているのだと思う。

丘とは直接関係ないのだが、「AUTOMATION AIR」では、
ところどころ歌詞が空白で抜けて 「  」 となっていて、
その付近に「記憶までも」「洗い流して」という歌詞が配置されている。
「HILL」で考察した、
一度死んだアベル(とカイン)が次の世で・・・という仮説を思い返すと、
記憶が消える描写や「  」と抜けている(=意識から消えている?)表現は、
輪廻転生の過程で記憶がリセットされることを意味してるのかな?
って感じもする。

ちなみに、先程書いた「僕を見つけ出して」も「  」で消えている。
その消えゆく「僕を見つけ出して」が、
「ACID RAIN」の「声が聞こえるから君を探してる」に繋がっているのだとしたら、
うーん!ドラマである。

深い眠りが覚めたら

FREEZE
8曲目
「眠り」と「丘」というキーワードがあてはまる曲が、PIERROT にはもう 1曲ある。
それがこの曲。
最後の歌詞が、「深い眠りが覚めたら 誰もいないあの丘で...」

ストーリー 〜 誰もいない丘

「深い眠りから覚める」という表現は、
「ACID RAIN」のところに書いた輪廻転生か?とも思ったが、
そう思って「丘」の方に目を向けると、今度は「誰もいない丘」。
カインとアベルはあんなに「丘」で互いを待ち続けてるのに「誰もいない丘」とはこれいかに。
この曲の主人公はカインでもアベルでもないのかもしれないけど、
ちょっとなんだか気になるっちゃ気になる。

この曲が収録されているアルバム「FREEZE」は
PIERROT には珍しくコンセプトを特に設けていない作品なので、
この「丘」や「眠り」は、他作品とは関連していないのかもしれない。

クリア・スカイ

クリア・スカイ
1曲目
FINALE
11曲目
※Album version
DICTATORS CIRCUS -A variant BUD-
1曲目
タイトルに一切「丘」が出てこないのに、かなり「丘」のイメージが強いのがこの曲。
ライブでは、サビの「約束のあの丘で」の箇所で会場が一斉に斜め上を指さすフリが印象的。

ストーリー 〜 世界の終りと「君」と「僕」

「メギドの丘」の考察で終末思想にちょっと触れたが、
終末思想といったら、PIERROT ではこの曲。
サビの歌詞は「壊れてくこの世界で 迷わず待っていて」
もう、思いっきり世界が終わっていってますね。
そして、続く歌詞は「二人決めた 約束のあの丘で」、
途中の歌詞は「君の呼ぶ声は僕だけに聞き取れるから」

終末思想と丘、そしてその丘で待つ「君」と「僕」。
再び「メギドの丘」パターン。

しかも興味深いのが、この PV の終わりの方、
時間にして 4:03 あたりにリスザルが出てくるのだが、
このリスザルが入れられている檻にあるネームプレートが「Adam + Eve」。
「メギドの丘」の「下僕として生まれた『君』と『僕』」を、これまた彷彿させる仕込みネタ。

「メギドの丘」との繋がり

「メギドの丘」の結末は「倒れる僕に気付かずに箱舟は消えていく」だけど
「クリア・スカイ」の最後は「焼けたまま寄り添いながら眠ろう」。
ストーリーは違うので、アナザーストーリー的な感じかなとも思うが、
そもそも、
「僕として生まれた」「方舟」などの神話的な単語が目立つ「メギドの丘」に対して
「アスファルト」「機械仕掛けの街」などが登場する「クリア・スカイ」、
たぶん時代も全く別。
おそらく「クリア・スカイ」の方は、いきすぎた文明社会が自滅を辿る様を描いたストーリー。

ストーリー 〜 文明と自滅

ちょっと丘から離れて「クリア・スカイ」の話になるが、
「いきすぎた文明が〜」仮説にはさっき出した歌詞以外に、
PV もちょっと根拠になっている。

例えば、
間奏部分(2:45 あたり)で KOHTA がリンゴをかじるシーンがあるのだが、
このかじったリンゴから現れるのがプッシュスイッチ。
これが核スイッチなんじゃないかという想像。
リンゴはしばしば「禁断の果実」として語られるのだけど、
この「禁断の実」は別名「知恵の実」とも言われている。
ここから連想すると、
知恵を手に入れてしまった人間がその知恵で自らを滅ぼす、
これに、スイッチひとつで核が世界を滅ぼすシチュエーションを当てはめると、あらピッタリ。
他にも、
「1941」と書かれた瓶に映像テープを入れて水に流すシーンは
忌々しい過去を繰り返さないようにとの、未来に向けたメッセージに見える。
1941年は太平洋戦争が始まった年、太平洋戦争は、日本が核爆弾を落とされた戦争。
「クリア・スカイ」の「クリア」は「ニュークリア(核)」とのダブルミーニングという説もあるので
なかなか興味深い。

アダムとイヴの輪廻転生

ちなみに、「クリア・スカイ」が収録されているアルバム「FINALE」には、
アダムとイヴが生まれ変わりを繰り返すというコンセプトがある。
表題曲の「FINALE」にも「二人に似せた『アダムとイヴ』」という歌詞がある。
なので、
時代は違っても、「クリア・スカイ」に登場する「君」と「僕」は、やっぱりアダムとイヴで、
メギドの丘で2人が出会うストーリー自体も、何度も繰り返されているのかもね。

まとめ

以上の仮説をまとめると、
「AUTOMATION AIR」「ACID RAIN」「HILL -幻覚の雪-」はこの順番に繋がっていて
主人公は、カインとアベル。
「メギドの丘」と「クリア・スカイ」は、
時代は大きく違うが、主人公はアダムとイヴ。
それらの物語はみな、同じ丘を舞台に繰り広げられているのかも?
ってな感じになる。

そして、物語の全体的な背景にあるのは、輪廻転生。
時代を超えて繰り返される物語は、
考えようによっては同じ2人の物語って可能性も・・・なんてね。

でも、人類最初の人間がアダムとイブ、
この2人からすべての人類は生まれたと考えると、
カインとアベルも、アダムとイブの子孫。
生まれ変わりではなかったとしても、少なくともこうして繋がってはいるってことね。
その2人と2人が同じ丘で相手を待つ。
なかなか感慨深いものがある。

まあ、キリトいわく、PIERROT 曲は「色々な捉え方ができるようにしてある」だそうなので、
正解は1つじゃないのかもしれないし、ないのかもしれないし。
でも、こうやってあれこれ考えを巡らせるのもまた一興。

ちなみに、PIERROT 2回目の再結成、通称「丘戦争」、
「クリア・スカイ」が演奏された時は大いに盛り上がったよね。
PIERROT とピエラーも、「あの丘」で再会できたんだよー!
うわぁぁぁぁ感動!

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